浮気の定理
山本が席を立ち、こちらへと近づいてくる。



山本の近くにいた水落が、それを目で追いながら、最後に私に視線を移した。



ニヤッと笑ったその表情から、山本との仲を疑っているんだとわかる。



あの写真を見せて、2人の仲をこじらせようとしているんだろう。



きっと私が山本にすべてを話しているとは夢にも思っていないに違いない。



「ちょっといい?」



山本が冷静な口調でそう言った。



「うん」



そう返事をして席を立つ。



二人で連れ立って歩く姿を、水落がじっと眺めているのが視界の端に映った。
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