浮気の定理
堕胎したあと、しばらくは体調も悪く、和也の夜の相手はとてもじゃないけど出来なかった。



自分自身も体だけじゃなくて、心もそんな気持ちになれなかったんだと思う。



3月に入り、だいぶ体調もよくなってきた頃、久しぶりに和也が私を求めてきた。



やはりあんなことがあっただけに、和也もさすがに気を使ってくれていた。



いつもより優しく丁寧に触れてくる和也に、なぜだか涙が出そうになった。



裏切ったことを知らない彼の、労わるような触れ方にズキズキと胸が傷む。



優しくされればされるほど、自分の罪が深くなるような気がして、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
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