浮気の定理
ありさの選択③
和也の様子がおかしい。
視線を感じて振り向くと、じっと立ったまま私を見てる。
視線が交わっても目を逸らすどころか、見つめたままだ。
思わず私の方が目を逸らしてしまうほど、彼はいつも私を見ていた。
「なに?どうしたの?」
なるべく明るくそう声をかけると、ようやく私から視線を外して、別に……と呟くだけだった。
急に不安になる。
後ろめたいことをしているからなおさらだ。
知らないはずだと思いながら、もしかしたら気付いているのかもしれないと最悪の事態を考える。