浮気の定理
もし、ありさが自分が抱えるものがなんなのかを話してくれていたなら、涼子も自分のことを話せたのかもしれない。



でも結婚が本気で幸せなことだと思っているんだとしたら、相談しても無駄かもしれないとも思った。



「なんでもない、ただ客観的にそう思っただけ……」



涼子は話さなかった。



いや、話せなかったのかもしれない。



先に駅が見えたのはありさの方だった。



「じゃあね?また来月」


「うん、またね?バイバイ」



5月に入り陽気もよくなった。



まだ5時だと空も明るい。



今夜も勇を待たすことのないように帰らなければならない。



涼子は気持ち足早に改札へと向かっていった。
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