浮気の定理
「笑ってる場合じゃないだろ?」



少しむくれたような声に、仕方なく顔を上げる。



それからいいことを思いついたと、ニヤリと山本を見上げた。



「気持ち悪いから、それ、山本くんが持っててくれる?私は消去するから」



そう言ったと同時に、あっという間に画像を消去する。



「もうこれで、あいつの弱味、それだけだからよろしく!」



「ふ…ざっけんなっ!俺だってやだわ!」



やっぱり山本とはこうやってバカみたいに、はしゃぐ方がいい。



車の狭い空間で二人でじゃれあいながら、私は今、この瞬間が幸せだった。
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