浮気の定理
自分が悪いとは全く思えなかったから……



勇に反抗したのは、新婚当時わけがわからなかった時以来だ。



そんな私を見て、思い通りにならない怒りが勇の中で増長したに違いない。



相変わらず顔は殴らなかったものの、腕を指が食い込むほど激しく捕まれて、腹部や腰に蹴りが飛んで来る。



うずくまって体を庇っても、髪の毛を掴まれ、顔を上げさせられた。



いつものように、愛してると言えと、その目は物語ってる。



けれど私は決してその言葉を口にしなかった。



おかげで、いつもの三倍以上は殴られ、蹴られ、失神寸前になった時、ようやくそれから解放された。
< 661 / 730 >

この作品をシェア

pagetop