悪魔の運動会


【安藤直人】


バトンは重かった。


でもそれは、バトンそのものの重さなのか、それとも裕貴の言葉を受け止める力がないからか?


全員、始末した?


最初に落とされた世古や植松、清水。唯一、野球部から離れてしまった小林健。運動会を引っ掻き回した寺脇リカや野々村哲也。そして、俺をずっと支えてくれた相原友子に、必ず会えると約束した間宮旬。


その全員が、居なくなった?


唯一、生き残った戸田裕貴の言葉は、あまりに重くのし掛かってくる。


それでも競技は始まる。


ここからまた俺たちを、選別していくんだ。


「それでは位置について。よーい」


うさぎが、空に号砲を放った。


黒くて禍々しい雲に。


俺と樋口美咲は走り出す。


グラウンドを一周。


ただ、全速力で走るようなことはしない。最初の一周目で差をつけることなんて無理だ。それが分かっている俺たちは、互いの様子を見るように、力を抜いて走った。


俺が気になるのは、次の走者。


紅組は立花薫だ。


問題は白組。


できるなら、次が裕貴ならいい。伊藤明日香と引き離すことができる。でももし、3番目が明日香と裕貴なら、必ずあいつは何かを仕掛けてくるはずだ。


遠目からでも、立花薫が待っているのが見える。


そして隣に立っているのは__?




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