a Love
◆何度でも
一緒に暮らして半年。
出会ってから早い展開だった私たちにとって、初バレンタイン。

忍さんは合理主義だからきっとイベントは興味ない。
それでもなにか……と洋酒をきかせた大人向けの生チョコを作ったのはいいけれど。

冷蔵庫開けて正方形の箱を取り出す。
……渡すのが怖いな。

そのとき玄関が開いた。私は飛び上がり、咄嗟にチョコを後ろ手に隠す。
リビングに姿を見せた忍さんが言った。

「遅いから寝てていいとメールしたのに」

その言葉に、やっぱり今日のことなんて気にも留めていないんだと悟る。

「ちょっと寝付けなくて」
「大丈夫か?」

彼は心配そうな顔で私の元にやってくると、優しい手つきで頭を撫でる。
早く手を離してくれないとどうにかなりそう。
私は俯いて首を横に振るだけ。

忍さんのほうが疲れているのにこんなことで迷惑掛けられない。

さらっとチョコを渡してしまえばそれで終わること。でも、チョコを渡して素っ気ない態度されるのも怖い。

葛藤していると、忍さんがさらに近づいた。
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