a Love
「鈴音からなんか甘い匂いがする」

きっと生チョコを味見したからだ。

「鈴音は甘いものが好きだな」と屈託なく笑う彼に、どうしようもなく欲情した。

「――好きです……っ!甘いものよりも忍さんが」

カッコよくて仕事もできて、会社でも人気があるって想像つく。
今日だって女子社員からチョコをもらったのかも。

自分がこんなに嫉妬深い女だって知らない。

「こんなこと何度も言えばうるさいと思われるってわかってるけど」

チョコを両手で突き出して、忍さんの胸に押し当てた。
彼は震える私の手からチョコを取り、小さく笑う。

「バカだな。本当にそう思う?知らないんだな」
「え?」
「オレがいつもどれだけ君からその言葉を待っているか」

そう言って私を抱きしめる。耳に唇を寄せ、囁いた。

「言って」

ぞくりと甘い電気が全身を走る。
私はたどたどしく口を開いた。

「……好き、です」
「全然足りない」

吐息を感じる距離で更に言われる。
ゆっくり瞼を押し上げて彼を見た。

「――好き」

そして広い背中に両手を回す。

「好き。好き……んっ」

夢中で繰り返していると、唇を塞がれる。
それは味見したチョコなんかよりも断然甘い。

「……ほんと、可愛いな」

彼は呟き、洋酒のように濃厚なキスで私を酔わせた。
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