先輩、大好きです。
だけど、櫂は違った。
その事に気づいてあげられなかった、幼い私でも少し、胸がいたんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「はい、これ。
俺、引っ越すから。
…今読んでくれて、全然いいよ。」
ただ悲しく辛い。
この手紙に何が、書いてあるのか。
その答えを知ろうともしなかった。
少なくとも、引越し、それだけで関係が崩れるということは、私も櫂も百も承知だったのだろう。
とても丁寧な。
平行線を保つ美しい字で「好きだ」
それしか書かれていない手紙に私は何を返せば良かったのだろうか。
「正直に答えて。
俺のこと好き?」
その答えは決まっていた。
「…ごめんね、櫂。
私、櫂をそんなふうに見たことなかった。」
こんな事言いたくなかった。
辛い思い、させたくなかった。