嘘だと言ってくれ
両親
──下の部屋からガタガタと物音がする

俺は起きて耳を塞ぐ

「また浮気!?」

「仕方ないだろ、金は入れてやってるんだからいいじゃないか」

「…っ!!!信じられないっ!!!!」



また喧嘩だ。ったくもう…夜中の3時だっつーのに。
いい歳して何やってんだよ。
別れるなら早く別れればいいのに。


俺の両親はいつもこうだ。
俺が小さい頃から価値観が合わなくて喧嘩、親父が浮気をしては喧嘩、終いには母さんが「もう離婚する」という始末だ。
これを何年間もしている。そろそろ飽きないのかな…?
なんで母さんは本当に離婚はしないのだろうか。

「まぁいいか、今回もどうせ大丈夫だろ」
そう口にし、自分に言い聞かせる。
落ち着くのに時間はそうかからない。
そのまま眠りについた。



ジリリリリリリ…ピ、
「…んー」
朝だ。寝ていると朝になるのはあっという間だ。
母さんたちの部屋も静かになっている。
仲直りでもしたかな…

眠い目をこすりながら服を着替えて1階に降りる。
リビングに向かうとそこには母さんがいて、

「ちょっと話があるの」

と言われた。その真剣な目を見て俺は今から何を言われるのかわかった気がした。もしかして…


「離婚する事にしたの。修平には悪いけど…
それで、お母さんとお父さん、
これからどっちと一緒にいるか決めて頂戴」


驚きはしなかった。そしてその時にはもう答えは決まっていた。




「俺…1人で暮らすわ」



「え?修平まだ高校生じゃない
どうやって…」


「バイトでも何でもするよ」


このままどちらかと一緒に暮らすのはもうしんどいと思った。
親父は手が早いし、家族を家族と見ていない。
母さんも母さんで、俺のことは邪魔だと思っているだろう。俺がいるせいで親父は外に目を向けるようになった。
じゃあもう俺が居なければそれで済んでいた話だったんだろ…もう今となっては修復できないけど。



「とりあえず、俺は1人で暮らすから」






両親の顔は見れなかった。
悲しむかな…喜ぶかな…
どっちかわからなかったから。

どっちだとしても、その顔を見たくなかったから。





俺はそのまま自分の部屋に戻った。

声を殺して泣きながら自分の荷物をまとめていた。


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