となりの芝田は、青い。
わたしは芝田がわからない。
芝田は、みんなを騙してるの?
「どっちが好き?」
「は?」
「カッコイイ俺と。カッコワルイ俺」
「……カッコイイ芝田なんて芝田じゃない」
「市川ならそういうと思ってた」
(……?)
どうして嬉しそうにそんなこと言うかなあ……。
*
「サイアクッ……」
帰ろうとしたら、外は大雨で。
持ってきたはずの傘が傘立てにない。
誰だわたしの傘をパクったやつは。
「市川、傘忘れたのか?」
「ゲ。芝田」
「ゲって、なんだよ」
「…………」
「こりゃしばらくやまないなー」
そんなことわざわざ言わなくても見ればわかる。
図書室かどこかで時間つぶそうかな。
「どーぞ」
「え?」
「俺、バカだから風邪ひかないんだ」
ウソでしょ。
わたしに傘を押し付け
手をひらひらふると
芝田が、昇降口から出て行った。
「待てコラァ……!!」
慌てて傘をさし、芝田を追いかける。
追いかけたところで簡単に追いつかない。
足、速すぎッ……。
校門から出て50mほど離れた場所で芝田が立ち止まり、ようやく追いついたときにはわたしは息がきれていた。