となりの芝田は、青い。


「どしたの市川。そんなに俺と帰りたい?」

「なにをどうとればそうなるのよ!」 


なんであんたは少しもバテていないの。

この、体力バカめ。


「あー。俺と相合い傘したくなった?」

「……折るよ?」


すると、芝田はほんの少し考えるような素振りを見せたあとこう言った。


「折られちゃ困るな。俺が、さすか」


ひょいと傘を奪い

わたしが濡れないように傘を傾けてくる。


「ちょっと。それじゃ、アンタが濡れる……」

「行こう」

「待っ、」


芝田は……。


女の子の扱いにホントはすごく慣れてる。


ダサく見えてダサくない。


バカなフリをして賢い。


わたしの知らない顔を持っている。


ねえ、なんのために?


なんでそんなことしてるの?



――わたしに恋してるとか言ったのも嘘?



わたしが簡単に騙されるから楽しい?


わたし、芝田に嘘つかれるのがすごくイヤだ。


からかうくらいなら近づかないで欲しい。


「……そんな顔すんなっつの」


(……え……?)


「そんじゃ、俺。ちょっと濡れてこようかな」

「は?」


わたしに傘をあずけ、走り出す芝田。


「なにしてんのッ!?」


ほんと意味わかんないよアンタ。


「風邪ひきたいの?」

「みてみて。薙乃ちゃん」

「なに……?」

「雨の滴るいいオトコがここにいるよ」

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