秘密の会議は土曜日に
「課長、先方から対応策の提出時期について問合せを受けています。早急に回答する必要があって……」


「それなら、みんな手が空いてないからさっきから止まってるよ。別件で忙しくなって。」


「それじゃ困るんですっ!!先方はカンカンですよ。少なくとも提出時期については今すぐ回答しないと、会社に帰ってこれませんっ!」


「うーん、それなら田中さんが一人で作業したとしてどれくらいかかるか見積もって答えてよ。どうせ田中さんしかその作業できないから」


「そんな無謀なこと言わないでくださいよ!」


あまりの事態に気が動転する。私だって自分の仕事を放っておいて吉澤さんのフォローをしてるんだけど!会社に戻ったら自分の仕事が山ほど残ってるんだけど……!?


「頼んだよ。困った時の田中理緒の名は伊達じゃないだろ」


課長が調子の良い事を言って電話を一方的に切った。受話器から聞こえる無機質な「プー、プー」という音が絶望感を煽り、思わず廊下に膝をつく。


徹夜したとして、明日の朝までに間に合うの……?いや、無理。


正直3日は欲しい。これだってぎりぎりのライン。


「でも3日って答えたら殺されかねないよね……。

2日ならどうかな……ヤダもう2徹なんて無理だよー。体力も気力も持たないよ。」


「あの、大丈夫ですか……?」


「これが大丈夫に見えますか!?

私は今、精神的な死と肉体的な死との間でせめぎ合ってるんです!

おのれ吉澤め!何が新婚旅行だ。トラブルの種を撒いて南国に高跳びしやがってぇぇ!

私なんか新婚旅行なんて一生行けやしないのに、なんでアンタのフォローで死ななきゃいけないのー!」


「あなたに死なれたら困りますから」
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