秘密の会議は土曜日に
独り言のつもりでぶつぶつと呟いていたら、予想外に返答が帰ってきた。


「まずは落ち着いてください」


そちらを見ると、スーツではなくシャツにカーディガンをさらっと羽織った私服姿の男の人が立ち止まっていた。



「通りすがりの私などを気にかけて頂き、誠に申し訳もございません。

只今気が動転しておりまして。大変失礼をばっ」


同年代の男の人だったので、深く礼をして顔は見ないようにした。


仕事の相手ならいくらでも話せるけれど、それ以外で男の人と話すのは極端に苦手なのだ。顔を見ると話が出来なくなるから、お辞儀のままその人の靴を眺めて早くどこかに行くのを待つ。


しかし、その靴はこの場に固定されたままだった。



「失礼をばって、くくっ。

今時若い女性からそんなこと聞くと思わなかった。」


「言葉遣いに不都合な点がございましたら、申し訳ございません。

しかしながら私は打ち合わせ中であり、さらには命がけの謝罪中でありますゆえ、これにて失礼させていただきたく。」


お辞儀をしたままくるっと方向転換して逃げようとすると腕を掴まれる。


「待って。

その交渉、作業日として少なくとも五日は貰ってください。」


「五日!?五日って言いました?

そんなことを言ったら確実に私は抹殺されます!担当の方はカンカンに怒ってるんですよ。」


通りすがりの人の無責任な提案についイラっとして言葉を返す。

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