秘密の会議は土曜日に
「頼むから『閣下』はやめてくれ。そんな呼び方笑うしかないだろ。」


「……皇帝閣下?」


「それ余計悪くなってるから。俺の名前は宗一郎だ、理緒。」


「理緒……でございますか!」


理緒さんから理緒に変わったその言い方に胃がじわっと熱くなった。まだお酒を飲んでいないのに変な感じだ。

閣下のお名前はとうに記憶しているから、改めて教えて頂く必要は無いんだけれど……。


「俺のこともできれば同じように呼んで欲しい。

それと、残り2回だ。」


同じように!?それってまさか呼び捨てということになるのでは?しかもさっきから容赦なく違反のカウントが進んでるのはどうしたらいいんだろう。


「宗一郎殿、それは無理難題でござる!」



「ぶっ……。理緒は忍者か。」



『ございます』から敬語を取っても『ござる』にはならないのが普通らしい。


「でも私には普通のしゃべり方がわからなくなってきました……あっやば。」


「うん、あと1回で違反5回だな。

自分で気付いた分少しだけ進歩してる。」


お料理とお酒が運ばれてきたので、食前酒のグラスを軽く合わせて乾杯をする。


「酒は平気?」


「昼からお酒とはなんて贅沢な。至福でござ……。私はわりとお酒は強くて。」


「それなら良かった。この業界にいる女の人ってどういうわけか酒に強い人多いよね。」


敬語はダメ、ござると言ったら笑われると思うと、話す度に緊張が走る。喉が乾いていたのもあり食前酒の甘い果実酒はあっという間に飲み干して、生ビールのグラスに手を伸ばした。


「くぅー、うまー!

……ってすみません失礼しましたっ。」


「はははっ。謝らなければ大丈夫だったのに。残念、5回目だ。」
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