秘密の会議は土曜日に
「抹殺なんてさせませんから」


「何を悠長なことを言ってるんですか。だいたい担当者の方すらあんなに恐ろしいのに、プロマネはあの『鬼畜皇帝』なんですよ。

晒し首にされたあげく、私の首を見せしめに会社に送りつけるくらいのことはやりかねません。

あるいは私の家族が狙われるのかも。こんな私にも故郷には年老いた両親がおりまして……


いけない、私ったら。早く打ち合わせに戻らないと!」


下を向いたまま高速で捲し立てて会議室を目指す。しかしそれは目の前の男性にもう一度阻まれた。



「謝るばかりが交渉ではありませんよ。

それに、始めから最速の納期を前提として交渉するのは間違っています。ギリギリ三日なら五日は貰ってください。」


「それじゃお客さんと険悪になるばかりで……」


「いいですね?」


最後の一言だけ妙な迫力を感じた。びくっとして体が硬直する。



「会議室の場所は?」


「この先のB会議室ですけど」


「そうですか、検討を祈ります。今お伝えしたことは必ず守ってくださいね。」



やっと手を離してくれたので、私は急いで会議室に戻った。あの人と話したおかげでかなり時間が経ってしまった。今日は厄日に違いない。



「遅かったですね」


ほら、担当のオジサンの顔にはさっきよりずっと濃い苛立ちが刻まれている。



さんざん待たせたあげくに「五日後になります」なんて言える訳がない。
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