秘密の会議は土曜日に
「え。……え!?」


土曜日というと、敬語で話すのは禁止という閣下の定めたルールがあったような……。


「既に違反12回。先週と合わせたら20回か。あと3回はペナルティーってことになるんだけど。」


「閣……じゃなくて、宗一郎殿!ずるい!!」


思わず叫んだ私の訴えも、閣下は笑って取り合わない。


「日付が変わるなんて、普通の会話でわざわざ言うか?理緒の油断が招いた失態だな。それに文句つけられても困る。」


「そんなー……」


「ていうかさ、『閣下』も『宗一郎殿』も相当ヘンな呼び方なのに、理緒のせいで慣れつつあるんだよ。

閣下なんて呼ばれて普通に返事する癖ついたら、どうしてくれんだ。」


「……どうと言われましても。」


「うん、これで21回。直す気無いだろ。」


「はぅあ!」


もう何も言うまい。手で口を押さえようとすると、その手をそっと退けられた。


「少しだけ、そのままじっとして。……とりあえずペナルティーの1/3ってことで。」


「はい」と言うと敬語になるので、黙って頷く。すると閣下はもう一度私の体をぐっと寄せて腕の中に包んだ。


「俺がこうするのも、苦手?」


閣下に問いかけに答えたいけど、硬直して声が出ない。

さっき知らない男の人から助けていただいたときは、もっと強い力で抱き締められても安心感が勝ったのに、今は空気でも薄くなったかのように胸の奥が痛くなった。


「……やっぱり怖い?」
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