秘密の会議は土曜日に
唇が触れそうなほど顔が近づくと、先週のキスの記憶を鮮明に思い出してしまった。


「ゃ……」


思わずもう一度首を反対方向に捻る。今ここであの時と同じように体から力が抜けたらと思うと、訳もなく抵抗したくなる。


「……嫌?」


「あのっ、私お酒くさいと思うんで……」


「さっきからずっと酒の匂いしてる。今さら気にするな。」


「そうなんですか!? すみま……」


「せん」と言う前に唇が重なって、言葉が継げなくなった。高柳さんの唇は少しひんやりして心地よく、柔らかく触れられると意識が溶けていくのがわかる。ダメだと思っても、体から力が抜けて……


「……っ」


唇に急に熱さを感じて、弛緩していた体が硬直した。舌で私の唇を開こうとしてるんだと分かった瞬間に、びくっと唇を離す。


「わぁああ!!」


「本当に酒の味がする。日本酒だな。どれだけ飲んだ?」


濡れたような瞳の高柳さんは、さっきからおかしな声をあげてばかりの私とは全然違う。静かな低い声は、まるで体に共鳴するような近さで囁かれた。


「えぇ……?えと……注がれた分が空になるまでです。それを繰り返してたから、量はよくわからず……」


「そいつにずっと、いいように飲まされてたんだ」


鋭い視線で睨まれるので、「断りづらくて」とか、「お酒飲んでると間が持つんですよ」とか、どうでもいい言い訳を続ける。


「いつもそうやって無防備なことばかりして。

職場でただ見守ることしかできない俺が、どんな気でいるか知らないだろ。」


「え……」


その苦しげな表情に、呼吸すら忘れてしまった。会話の流れとしてはごめんなさいと言うのべきかなと思うけど、脈略もなく「好きです」と言いたくなってしまう。



もう一度唇に触れた感触に、今度こそ全ての意識を奪われて目を閉じた。痺れるような熱が唇から全身に伝わっていくのがわかった。



「……ぁっ」


ゆっくりと私の中を撫でる舌が、逃げ場を無くしていく。……自分が何から逃げているのかもよく分からないけれど……。



「んっ……」


再び目を開けたとき、視界がぼやけて部屋の明かりが眩しく見えた。


あれ、この感じ……。今頃になってお酒が回ってきちゃったかも。いつもはどれだけ飲んでもわりと平気なのに、変なの……。
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