なれたなら。ーさよなら、私の大好きな人ー
【深侑 side】
暗くなり始めた夕空を見上げて夏生が待つ家に向かう。
寄り道をしていたら遅くなってしまった。
「………明日、か……」
紙袋を持つ手に力を入れる。
夏生の家に着いて自分の家に帰る感覚でドアを開ける。
ドアの開けた音で誰が帰ってきたか記憶してる夏生。
"お父さんは結構勢いよく開けるんだよ。
お母さんはゆっくり開けてゆっくり閉める。
深侑はね、ゆっくり開けるけど閉めるのは放置するんだよ。"
なんて笑いながら教えてくれた。
そして俺が帰ってくるのが分かればいつも決まって玄関まで迎えてくれるのに。
夏生が来ない上に玄関に見知らぬ靴が一足。
明かりのついた和室から微かに声が聞こえる。