キライ、じゃないよ。
キライ、じゃないよ。

a while ago/side mamori

ーーー


勇気を出して八田くんに電話をしたのは、あの日から少し経ってからだった。

自分の仕事の都合で日付を決めたのに、彼は仕事の日程を調節してくれたようで、すぐに時間を作ってくれた。

散々会うのを躊躇って、だけど本当のことが知りたいという気持ちが優って会いに行った。

待ち合わせのファミレスで、私を待っていたのは八田くんと、まさかの原川さんだった。


「どうして……」


2人が並んで座る席の前に、八田くんに促される形で座った。


「ごめん、皐月さん。俺と会うの、本当は嫌だったろ。でも、誤解させたままは嫌で……ハッキリさせるために来てもらったんだ」


眉根を寄せ、辛そうな顔をしながら、それでも八田くんはキッパリと言い放った。

隣に座る原川さんは、面白くなさそうに下唇をつき出し、あさっての方を向いている。

2人が揃ってこの場にいることが違和感だらけで仕方ない。

あの日、田淵さんの家に原川さんもいた。けれど彼女は酔って寝入っていたし、何も知らないんだと思いたい。

それに、誤解って?ハッキリさせるってなに?

向かい合う八田くんの視線をまっすぐ受け止めきれずに、視線を逸らしてしまう。

いやでもあの夜のことを思い出して、指先から冷えていくのが分かった。
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