キライ、じゃないよ。
「結論から話すと、あの夜のことは原川達が仕組んだことだから」


指先から身体中が冷えていく感覚に、無意識に両手をギュッと握り締め身を固くしていた私は、八田くんの言葉に、思わず顔を跳ねあげた。


「……しく、んだ?」


八田くんの言葉を繰り返してみても、すぐには理解できなかった。


「なによ、ちゃんと冗談だって話すつもりでいたわよ」


ここに来て初めて原川さんが口を開いた。

なにを大げさなと言わんばかりの、面倒臭げな言い方に怒りが湧く。


「どういうこと?ちゃんと話して」


怒鳴りたい気持ちを抑えて、原川さんを睨み口を開く。


「田淵ちゃんが、同窓会で再会した樫くんと仲良くなりたいって言ったのよ。私は協力してあげ……」

「よく言うよ。最初に言い寄って振られたから冗談半分で田淵をけしかけたくせに」


間髪入れずに八田くんが原川さんの言葉を遮った。


「田淵さんが、樫の事を?」

「相変わらず鈍感な女ね。あの頃から樫くんを独り占めして、のほほんと過ごして来て、再会したらしたでまた樫くんを振り回して」

「振り回してなんて……」

「自覚ないのね。まぁ、でもいいわよ。樫くんだって、あんな写真見せられて、田淵ちゃんに迫られたら、意外と簡単におちるかもしれないわね」

「あんな……って、まさか原川、おまえ」


八田くんの焦った様子に何事かと尋ねると、彼は言いにくそうに口を開けかけたり、閉じたりと逡巡したあと、コートの胸ポケットからスマホを取り出した。

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