キライ、じゃないよ。
「護さ、」
「ひゃ、ひゃい!」
思わず変な声が出て、そのまま返事してしまった。
は、恥ずかしい〜。
キョトンと驚いた表情の樫が視界にいて、だけどどうフォローしていいのかも分からない。
「護、緊張してる?」
そうですよね、分かりますよね、
樫の気遣うような声音に今更見栄を張るわけにもいかず、言葉なく頷いた。
途端、樫がホッとしたような表情で大きく息をついた。
「俺も、すっげー緊張してる。実は」
「へ?樫が、どうして?」
私と違って経験豊富だろう樫が、こんな場面でも緊張するなんてすごく不思議だ。
「緊張するに決まってるだろ。マジで好きな女とこうして一緒にいるんだからさ」
マジで好きな女だと、はっきりと樫の口から聞かされると驚きの方が大きい。
私はずっと樫のことが好きだったけど、樫は私のことをいつから好きでいてくれたのだろう。
「なに、その呆けた顔は」
「え、だって。知らなかったなって。樫が私のことを好きだったなんて、全然知らなかった。再会してから私、樫に好きになってもらえる要素あったかなって、今考えてた」
私の言葉にガクリと項垂れた樫。
「鈍いとは思ってたけど、ここまで壊滅的な鈍さだとは思ってなかったよ」
「か、壊滅的?」
凡そ好きな相手に対して使う言葉じゃないよね、それは。