キライ、じゃないよ。
『護だって……』


そう言いかけて、香の言葉が急に途切れた。


「……言いかけて止めるの気持ち悪い」


そう返したけれど、それは彼女の優しさだろうってことは、なんとなく気づいてた。

私にだって、淡い恋心を抱く相手はいた。

香の元彼、山近 宏也とよくつるんでいた樫 響也(かし きょうや)という同級生。

樫とは2年のクラス替えで知り合った。

当時既に付き合っていた香と山近くんは、2年でも同じクラスになった。

香と私は偶然席が近かった事から親しくなって、必然的に山近くんとも親しくなり、その友人である樫ともよく話すようになった。

しっかり者のおかん気質の香に、ヤンチャな山近くん。2人は恋人同士というよりは友達の延長のようなカップルだった。

休日には2人でデートすればいいと思うのに、私や樫を誘いみんなで楽しく騒ごうってのが好きな2人だったからよく付き合わされた。

Wデートみたいだと気負う必要もない位にみんなで楽しく遊んだっけ。

樫はよく山近くんの暴走を止めてたから、クラスの中でも山近ストッパーと呼ばれて、ヤンチャで短気なところのある山近くんがうっかり喧嘩を売ったり買ったりしないように気を配っている姿が印象的だった。

頭が良くて、ともすれば冷たく見える印象も、付き合い続けていくことで本当は優しい人だって分かった。

そんな樫だったから、当たり前だと言われればそうかもしれないけど、結構モテた。

普段あからさまには近づいたりしない女子も、バレンタインや樫の誕生日にはここぞとばかりにアピールしてたっけ。

香と山近くんというカップルが近くにいながら、樫も私も恋愛にはひどく疎くて、恋とか愛とかそういうものを自覚する前に友人として仲良くなり過ぎていたのかもしれない。

樫は、私の中で1番仲のいい男子。

それが、当時の私が認識していた樫との関係だった。









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