キライ、じゃないよ。
やっぱり、連絡しなくてよかった。

本当は樫と連絡先を交換してから、ずっと連絡を待っていた。

もしかしたらメールくるかもしれないって。……来たらいいなって。

待って、待って、連絡が来ない理由をずっと探していた。

なんだ、簡単な理由だった。

私に連絡を取る理由が、樫にはなかったってこと。

特別な思いなんてなくてもよかった。

ただ懐かしいねって同窓会の延長みたいに、香や山近くん達と一緒に飲みに行ったり……。

そんな風に会えたらいいなって……。

でも、そもそも樫は私のことなんとも思ってなくって。だから、私に連絡を取る気も、会う気なんかあるわけなかったんだ。

そりゃ、そうだよね。

連絡先を交換したからって、連絡を取らなきゃいけないってことはないんだから。

ブロック、されちゃってるのかもしれないんだなぁ……。

樫のアドレスを見て溜息が溢れた。

ロッカーで私服に着替え終わってもスマホを片手にぼんやりして帰ろうとしない私を訝しく思ったのか、同僚から「帰らないの?」と声をかけられて我に返った。


「あ、うん。もう帰るところ」


別れを告げて、スマホをバッグに入れようとした時無料メールアプリの通知を知らせる音が聞こえた。


手帳タイプのスマホカバーを開き、液晶に表示された文字を見て……がっかりしたのと同時に、表示された名前に心当たりが思い出せずアプリを起動する。

アプリが開かれて、メールを読んで、そしてその相手が八田くんだと思い出した。
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