キライ、じゃないよ。
原川との接点なんて、同窓会のあの日だけだ。二次会の後、田淵と原川をそれぞれ送っていった。

ただそれだけ。

けれど、言われてみれば車内で話をした気がする。

久しぶりに会ったクラスメイト達の話。その中で原川が触れた護とのこと。


『樫くんって、今も皐月さんのこと好きでしょ?隠したってダメよ。バレバレだもの』

『私の父が今皐月さんの務めている病院に入院してるの。彼女に会う機会は私の方がきっと多いわね』

『協力してあげようか?彼女に男の影がないかとか調べたり、樫くんと上手くいくように』


なんとなく思い出した。会話とは呼べないもの。一方的に原川が話して、相槌すら適当だった会話の内容を。


「協力者になってあげるって話したじゃない」


コーヒーをテーブルに置き、ニッコリと微笑む原川に面倒な空気を感じた。

元来そういう細工とか根回しとか、裏でコソコソ動くのが嫌いな自分は、原川のようなタイプは苦手だ。

学生の頃、本人の俺が知らない間に、彼女が友人達に唆されて面倒なことになった事もあったから。

こういう腹黒いタイプは本当に苦手。


「あー、話したっけ?忘れたわ、てか、原川もわざわざ面倒なことしなくていいよ」

「いいの?皐月さんって結構モテるみたいよ。チンタラしてたらあっという間に攫われちゃうから」


身を乗り出してきた原川の胸元が見えて、さりげなく視線を逸らす。


「……別に。会いたくなったら自分で会いにいくし、手に入れたくなったら自分で動く」


「……へぇ、樫くんって、やっぱりかっこいいね。そんな風にキッパリ自信持って言える男って最近はあんまりみないよ」

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