キライ、じゃないよ。
『樫くん、私は……樫くんでも、八田くんでもない。護の味方だから。護のことを中途半端に扱ったり、傷つけることは絶対許さないからねっ』


護の保護者かよって突っ込みたくなるくらい、幸島はあの頃と変わらず、護にとって唯一無二の存在なんだろう。

一言物申す!といつでも真っ直ぐに向かってくる幸島のことを、俺は割と気に入っている。


『……樫くん、聞こえてる?護はね、あのこはずっと……』

「幸島はブレないね。」


彼女の言葉を最後まで聞かず、変わってないなぁと感嘆の溜息を落とせば、電話の向こうでは「はぁ?」と怒りを含んだ声が聞こえる。

協力してくれるなら、原川より断然幸島の方がいい。


『ちょっ、樫くん?』

「幸島、悪いな。旦那に代わってくれ」


山近をあえて旦那と置き換えると、幸島が慌てるのが分かった。電話向こうで「もうっ、」と吐き捨てるような声が漏れ出てくる。


『おいおい、うちの嫁をからかうなよな』


山近まで悪ノリして嫁と返してきて、直後多分幸島に殴られたようだ。

……手の早い嫁だ。でも、山近には合っているんだろう。

本当にこいつら7年のブランクがあるんだろうか?まるでずっと付き合っていたようだ。

俺と護はまだ一度も始まってはいない。多分それ以下。

ゼロから……いや、マイナスからのスタートになるんだ。

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