キライ、じゃないよ。
『は?今週末の予定?』


原川が職場に来た日の夜、俺は山近に連絡を入れた。

ちょうど幸島とのデート中だったらしく、不機嫌ながらも答えてくれた。

多分、もしかしたら、かなりお邪魔な場面だったんだろう。

許せ、友よ。


『土曜日なら俺は暇だけど?』

「土曜日?お前らデートじゃねぇの?」


携帯電話の向こうで2人の話す声が聞こえてくる。理由までは聞いてなかったんだろう。

昔の護なら、多分八田と飲みに行く約束をしたとしても幸島を巻き込むと思う。

7年という年月が護をどう変えたかは知りようもないが、久しぶりに会った彼女の様子を見ていて、なんとなく護は昔のまま変わっていない気がした。


『……なんだよ、もしかして知ってたのか?』


不意に山近の訝しむ声が耳に届いた。


「いや。で、どうする?」

『同窓会、らしいからな。しかも、俺年休余ってるし?』

「偶然だな、俺もだよ」


長い付き合いの相手だ。何も言わなくても伝わるところは本当に気楽だし、付き合いやすい。


『……っ、待てって。香、おいっ』


携帯の向こうが騒がしい。これ以上の邪魔はどちらからも恨まれそうだと早々に電話を切ることにした。

……けれど、携帯のスピーカーから飛び出して来たそれは、軽く凶器となって俺の鼓膜を刺激してきた。





< 47 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop