キライ、じゃないよ。

kashi.3




なんで!

なんであのタイミングで電話なんか鳴るんだ!

護と別れて全速力で走りながら、悪態を吐く。

せめてあと1分、いや10秒後だったら。


「あ〜っ、もうっ!」


可愛かった。
すごく、ものすごく護が可愛くて、愛しくて。

酔っていたせいもある。だから、衝動的な行動に歯止めなんて効かなくて。

護を抱き締めて、逃げられなかったことに調子に乗った。

驚いて、戸惑って、ただ動けなかっただけかもしれない護に強引に触れようとした。

電話は、そんな卑怯な俺に対する制裁だったのかもしれない。

護だって酔っていたんだろう。流されて……今頃後悔してるのかもしれない。

後悔……してなければいい。

俺のことをキライにならなければいい。

明日、そう明日連絡をしよう。

そうして素面な状態で、俺の気持ちを伝えよう。

走りながらスマホを取り出して、履歴を確認する。

護に言ったことは嘘じゃない。同窓会のあの日連絡先を交換した日から、俺は何度も護の連絡先を見ていた。

番号も、アドレスも暗記するほど。

呼び出し音が鳴るまでに切って、また……。

自分自身のストーカーじみた行為に吐き気がする。


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