キライ、じゃないよ。
強引な手とヘタレの告白

mamori.4





あの夜、樫と別れてから5日経った今でも樫から連絡は来なかった。

鳴らない携帯を待っているうちに、あの日の出来事は、樫を好きになりすぎていたせいで、酔いもあったし夢でも見ていたのかもしれないと思うようになっていた。

そして6日目の午後、八田くんに呼び出されて病院近くのファミレスに向かった。

八田くんは既に来ていて、私は彼を見つけて席へと近づき、彼の前に座った。


「急に呼び出してごめんね」

「ううん、今日は半休で仕事終わったから」

「じゃあ、時間少しある?」

「うん、いいよ」


店員がやって来たので話が中断された。

フリードリンクとケーキを頼んでから、もう一度八田くんに向き直った。


「そう言えば、この前の飲み会の時全部払わせちゃったでしょう?半分出すから、いくらだったか教えてもらえる?」


奢られるにしても八田くんへの負担が多すぎだとずっと気になっていた。


「いや、いいよ。俺が誘ったんだから、それくらい出させてよ」

「でも、樫達の分まで……」

「いいんだ。臨時収入があったから」

「そう、なの?」

「皐月さんって昔から律儀だよね。他の女子なら『ラッキー』で終わるところを、『公平にするべき』って、絶対割り勘にさせるもんね」

「だって……同じ高校生だもん。懐事情は変わらないでしょ」

「そういう所、好きなんだ」


好きという言葉を躊躇いなく使う八田くんを羨ましく思う。

歳をとったら尚更言えないよ。

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