キライ、じゃないよ。

押し切られる形で八田くんと焼肉に行くことになってしまった。

しかも2人で。

あの後香に連絡をしたらスマホは繋がらなかった。

そう言えば2日位前に、年休を取って山近くんと温泉に行くと話していたことを思い出した。

それが今日だったんだろう。

別に八田くんと二人きりが嫌と言うわけではない。八田くんとは既に一緒に飲みにも行ったし、今日だって2人きりで会っている。

焼肉だって、今更と言えば今更なんだけど。

八田くんがただの友達だったら、こんな風に悩まなかった。

ストレートなまでに好意を示してくれる彼だからこそ、2人きりで会う事は、少しというか、かなり抵抗がある。

古くて融通の利かない、頑なな女だと思う。


「どうしよう……今日の約束」


気になる事はたくさんあるのに、更に混乱する事態に陥ってしまった。

数時間前の迂闊な自分を叱りつけたい。


「……樫のバカ」


元はと言えば、樫が思わせぶりな態度を取るから、諦めたくても諦めきれないんじゃない。

高校の頃みたいに、ハッキリすればいいのに。

あんな風に優しくされたり、誤解してしまうような態度を取られたら、私みたいな恋愛音痴は簡単に落とされちゃうんだから。

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