キライ、じゃないよ。

本棚から高校の時のアルバムを取り出して、テーブルの上で広げた。

懐かしい友人達の顔を見ていると、あの頃の思い出が少しずつ蘇ってくる。

楽しかった事、辛かった事、そして……樫に抱いていた淡い恋心までも蘇ってきた。

どうして樫のことを好きになっちゃったんだろう……。

樫は私の事は友達として見ているだけだった。

友達以上でも以下でもない。ど真ん中で、親しい友人ってだけ。

分かっていたのに、好きになってしまった。

あの頃他のどの女子よりも仲が良かったのは私と香だけで。

香には山近くんがいたから、事実私が樫の中で1番だって……勘違いも甚だしいんだよね。

樫の特別っていう言葉の中には、私が望む『恋愛』って二文字は存在しなかった。

分かってて、それでも樫への想いを止められなくて、用意したチョコレートは、上げることができずにゴミ箱に捨てられた。

私の恋心と一緒に。

進路の違う樫とは、卒業までが本当の意味で一緒にいられる貴重な時間だったのに、元には戻れなかった。

私を振った樫の前で、強気な笑顔は見せることができても、自然には笑えなくなってた。

高校を卒業して、あの同窓会で会えるまで一度も会えなかった。

長期の休み位は実家に帰るかもしれないと思って、偶然を装って彼の家の近くまで行ったけど、一度も。

それまで会いたくない日だって、毎日会っていたのに、会いたいと思って会えない日が来るなんて思いもしなかった。

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