優しいあなたの嘘の法則



「ちょっと待って。…なんで想くんのおかげなの?」
「俺がななこのこと気になってるっていうのに気づいてたから、ななこのアピールずっと知らんぷりしてくれてたんだよ。気づかなかった?」
「やっぱりそうだったんだ。想くん優しいなぁ。てかさ実希、」

2人は会話を続けている。私は会話が理解できず、ついていくことができなかった。

「想くんといえば、実希この間想くんと一緒に帰ったんでしょ?」
「え、そうなの?」
「あ、うん。アパートが駅の方にあるからついでに送るって」
私がそう言うとダイキくんは「え、本当にそう言ったの?」と、怪訝そうに眉をひそめた。
「想のアパート、駅とは反対の方だけど…?」
「あ、たしかにそうだよね。私も聞いたことある」
「……うそでしょ、」

次から次へと明らかになる事実に、私は頭が混乱していた。
食堂では、タイプじゃないから嘘をついたなんて言っていたけど、全然違うじゃないか。

なにが同じ方向にアパートがある、だ。蓋を開けてみれば、駅から2キロも離れたところにあるじゃないか。どういうことだあの大嘘つき野郎め、分かるように説明して欲しい。今すぐに。

会話についていけず呆然とする私を、2人は心配そうに見つめていた。その後の授業は案の定集中することができず、私は想くんのことばかり考えていた。

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