ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
伝統的な建築様式と、モダンな雰囲気が絶妙に融合したこの高級料亭で、私はこれからお見合いをする。

こんな堅苦しいお見合いは現代では珍しいかもしれないが、両親が昔ながらの風習を大切にする古風なタイプのため、この形となった。

二十四歳にもなって恋のひとつもしたことがない私が、恋愛をすっ飛ばして結婚するかもしれないのだ。この飛び級っぷりを友達に話すと、皆百面相をしてくれるからおもしろい。

高い天井が吹き抜けになっているロビーの窓から、うっすらと雪に覆われた庭を眺めて物思いにふけっていると、後ろから母が近づいてくる。


「さぁ、お部屋に行きましょう」

「うん」


そっと背中に手を当てて促され、受付を済ませた父と一緒に、店員さんの案内で奥の個室に向かって歩き始めた。

この料亭は、お見合い相手である男性のお父様が代表を務める、霞浦(かすみうら)グループの店舗のひとつ。

霞浦グループは主にリゾートホテルや旅館を経営している大手リゾート会社で、日本各地で事業を展開しており、業界内にその名を轟かせている。

つまり、私のお見合い相手は御曹司というわけだ。そうでなければ、私たち家族の経営難に陥っている店を助けるための結婚話なんて浮上しないだろう。

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