彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)
「凛、何も食わずにいるのもよくねぇーから・・・ほら。」
手が伸びてきて、シルキローズがすらされる。
「み、瑞希お兄ちゃん・・・?」
「ピザだ、食え。」
「あ、ありが・・・」
《奴らが出たぞー!》
《ガウガウガウ!!》
「ふああああああ!?」
瑞希お兄ちゃんと一緒に、目を塞ぎたくなるような光景がうつる。
口を塞いだら、ピザとキスすることになった。
「おい、凛!?口を開けてくれないと~」
「よせ、瑞希!そのまま食わせるな。」
「のどに詰まらせちゃうわ。ちぎって食べさせてあげて。」
「小さくして投げ込んでしまえ。」
「わはははは!」
「そうだな。凛、あーん。」
「あうううう・・・あーん・・・あううう!」
震える私の口に、瑞希お兄ちゃんが小さくしたピザを入れる。
「お、食べた食べた。」
「この調子で、肉以外をやろうぜ?」
「あたしもやりたい!」
「順番だぞ。」
「わはははは!映画見ろよ、お前ら!」
瑞希お兄ちゃんの膝の中で、夏らしいホラーを鑑賞する。
(あああ・・・・怖いけど、幸せ・・・!)
瑞希お兄ちゃんアーンしてもらいながらDVDを見るなんて、なんて贅沢なんだろう。
とっても幸・・・
《ジャクリーン!!》
《死にたくなーい!!》
《ウガァ―――――――――!!》
「きゃああああああ!!?」
とても幸せじゃない最後を迎える登場人物を見て、私の幸せ気分が収縮する。
「た、食べた!人間を食べた!即死ですよ!」
「いや、まだ息があるみたいだぞ、凛?あ、他のゾンビも一緒になって食い始めた。」
「瑞希お兄ちゃん、何で平気なの!?」
「いや、一番怖いのは生きてる人間だからなぁ~」
「そうかもしれませんけど!」
瑞希お兄ちゃんの首に顔を埋めながら恐怖に耐える。
「凛にも怖いもんがあるんだな~?」
「ありますよ!」
からかう相手に涙目で言えば、頭を抱き寄せ、髪にキスしてくれた。
いつもなら、嬉しくて固まるけど、今は恐怖で体が硬直する。
その後、烈司さんが借りてきたDVDが全部ゾンビシリーズと知らされ、朝まで恐怖の鑑賞会をする羽目になった。