明日死ぬ僕と100年後の君

「いまの仕事は本当に大変なの! 帰ってきて寝るだけで精一杯よ! くたくたで帰ってくることすらできなくて、病院に泊まり込むのも珍しくないって、お母さんだって知ってるでしょ!?」

「どうだか! 子どものこともほっぽりだして、どっかで男とよろしくしてんじゃないのかいっ」

「またそれ!? ありえないって言ってるでしょ! そんな暇あるって本気で思ってる? どれだけわたしが稼いで家にお金入れてるかわかってないわけ!?」



まただ。また今日も同じようなことを言い合っている。

飽きもせずに、呪いみたいな文句を繰り返し口にして、互いを罵って、傷つけあって。

その先に一体何が残るというんだろう。


ふたりの吐き出す呪いに、聞いているだけで蝕まれていく気がした。

心が腐っていくようで、怖ろしい。


水分のない乾いた、けれど温かいひいばあの耳を塞ぐ手が震える。

せめてこのひどい呪いの応酬に、ひいばあが目覚めてしないことを祈った。

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