明日死ぬ僕と100年後の君

さっき見まちがえたと思った白い羽は、実はこの人の背中にあったものかもしれない。

なんて、おかしなことを考えてしまう。

それくらい、その男子生徒は浮世離れして見えた。



「す、すみません! すみません!」

「気にしないで。たいしたことじゃないから」


そんな紳士的なことをさらりと言って、男子生徒は集めたプリントを女子に渡している。


その横顔はずいぶんと整っている。

自然な様子で女の子に手を貸していることもあり、まるで童話の王子様みたいだなと思った。


階段の踊り場から差し込む光が、スポットライトみたいに彼の上に降り注いでいたから、余計にそう見えたのかもしれない。



「なにあれ」


思わず漏れた呟きに、少し前を歩いていた友だちの美咲が振り返って「ああ」とうなずいた。


「ボランティア部の聖人じゃん」

「せいじん?」

「えーと。ボランティア部の部長で、常に人の為になることをしていて、しかも見返りを求めることがまったくないっていう、奉仕の精神を持った人? らしくて。まるで聖人みたいだって言われてる」

「ほうしのせいしん……」

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