いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
アンニュイな気分に浸るひかりの後ろでは、浩二が「何なんだよ、あいつら。1日無駄にしただろ、バーカ」と、バラエティ番組を見ながらもずっと悪態をついている。
タレントの大きな声と、それに呼応して上がるむやみに大げさな笑い声。
やかましいテレビを見ながらブツクサ言う浩二はもっとやかましい。
「ねえ、テレビを見るのかしゃべるのか、どっちかにしてよ。うるさいよ。だいたいお兄ちゃんの段取りが悪いからじゃない。バカはどっちよ」
「そっちだよ。おまえのせいだろ。あー、ムカつく。サイラスに一発頼むかなあ」
サイラスとは不良以上、やくざ未満のちんぴらグループだ。
その一人は浩二の中学時代の悪友で、高校生になるまで彼らとつるんでいた。
何度か一緒に問題を起こし(喧嘩とか恐喝どか)てそのたびに面倒な目に合ってきた弁護士の父親は、サイラスとのつきあいを厳しく禁止した。
じゃなきゃ出ていけ、絶縁すると父親から本気で詰め寄られたため、浩二は一応彼らとの付き合いをやめ、ひどい悪さからは卒業した。
とはいっても連絡を絶っていたわけではない。
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