青春の蒼い花


私達の劇がついに始まった。


みんな不安げに私の演技を初めは見ていたが、


私が舞台裏にもどってくると


「蒼衣ちゃんすごい!!
いつあんな完璧にセリフ覚えてたの!?
ていうか、逆にセリフど忘れしてた人の分もアドリブで繋げてくれてたし、ほんと凄い!」


久しぶりに人から褒めらて、私は素直に照れてしまった。



そして、ついに物語は終盤にさしかかった。



たく兄の演技はなかなかの腕で、観客たちは物語に惹き込まれているようだった。


高津は王子役であるが、野獣の姿は別の生徒が演じている。



ガストンと戦い、重症を負って死にゆく野獣。
私は野獣の姿の王子に抱きつき、泣きながら愛の告白をする。


するとライトや音響の演出がはじまった。
魔法がとけていき元の姿の王子様が現れる。


ここからようやく高津と私の演技が始まる。


台本通り、魔法がとけて、ハッピーエンド

せっかくの王子登場は最後の締めという感じで、少し呆気なかった。



「王子様...、魔法がとけたのですね」



家中の魔法がとけてゆき、
家具や食器にされていた人たちも元の姿で登場する。


そして、最後は王子様とベルが手を取り合って見つめ合う。


ナレーションの『2人は召使いたちとモーリスが見守る中、結ばれて幸せに暮らしました』というセリフで幕が降りていく。






そういう設定だった。





でも、これはアドリブなのだろうか。




私は気づいたときには王子様の腕の中にいた。




私が高津の手を握った、その瞬間、
一瞬にして、私は高津の胸に引き寄せられた。




ねえ、どうしたの?

これ、台本にないよね



そう言おうとしたとき、


ドクンドクンと波打つ心臓の音が聞こえてきた。



これは、高津の音...?




とてもくすぐったくてでもなんだか落ち着く音。


高津の腕の中は温かくて、私は自然と高津の背中に腕を回していた。



そして密着されていた体が少しずつ離れていくのを感じ、高津の顔を見上げると、体は離れたはずなのに、どんどん高津の顔が近づいてきた。



そして、ふわっと優しい感触が唇から伝わった。



その瞬間から客席や舞台端から悲鳴やザワザワとした声が聞こえてくる。




ようやく何が起こったのか理解出来た時、
ナレーションのセリフも終わり、幕も降りてしまっていた。






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