青春の蒼い花
気づいたら家に着いていた。

いつも余裕があるように止めてある母の車が端っこに詰めて止められていた。


たく兄の車はすんなりと入った。


私の父は長期出張に出ていて車がない。
そこで私の母は堂々と車を車庫のど真ん中に止めている。

それなのに、いつもと違って端っこに綺麗に止められている母の車があり、不思議に思った。


まるで、たく兄が来るのを知っていたみたい。



ガチャ


「ただいまー」



私がいつものように玄関のドアを開け、ただいまを言って中に入る。

「お母さんいる?今たく───」


私が玄関先でたく兄が来ていることを報告しようとするとドタドタと中から足音が近づいてくる。

出てきたのはいつもと違う、何か違和感のある母だった。

よく見ると化粧をしていた。

いつも家にいるときはすっぴんのはず。


私の母は、お客さんが来た時、化粧をしていないと絶対に出てこようとしない。そう言うときは私たちがお客さんの相手をして、時間稼ぎをしている。

そんな母が準備満タンでこうして出迎えてくるのはおかしい。


「卓巳君いらっしゃい!本当に久しぶりね!あら、蒼衣も一緒に帰ってきたの?おかえりなさい。」



え…?


聞くからに出迎えにきた理由は私が帰って来たからではなく、たく兄が来たからのようだった。



なんでたく兄が来ること知ってたの??


もしかして、私を待っている間に連絡していたのかな?



そう思って、後ろを振り返りたく兄を見た。

すると、たく兄の手には今まで目にしなかった大きなボストンバックが握られていた。


「恭子さんお久しぶりです。今日からお世話になりますね。」


今日からお世話になります…?


私はたく兄が言ったことを頭の中でリピートする。


もしかして…



「昔みたいに好きに使ってくれていいからね。」



「たく兄、もしかしてうちに住むの…?」


私が探り当てるように言うと、たく兄は嬉しそうに微笑んで言った。


「蒼衣、今日からよろしくね」


靴を脱いで、慣れたように私のうちに上がり込むたく兄。


私はその後ろ姿を呆然と眺めていた。


理解できない状況に頭が働かない。



ありえないんだけど!!!






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