青春の蒼い花
グラウンドから離れ、電灯が一つだけ付いている薄暗い校舎裏へやってきた。
掴んでいるたく兄の力は少し痛いほどだった。
ドン
やっと離してもらえた
そうおもったら私は壁に追いやられていて、逃げ出せない状態になっていた。
「なんで、あんなことしたの?」
薄暗い中、見えたのはたく兄の怒った顔。
そして、冷たく悲しい目だった。
「………っ」
何か言わないといけないのは分かっているけど何も言えなかった。
目の前にいるたく兄が
いつもの余裕なたく兄とは違って
必死に私を逃がそうとしない
そんなふうに見えて怖かった。
でも、それ以前に自分のした行動が理解できていないから、何も言い訳が出てこない。
「蒼衣は…あいつが好きなのか?」
怖かったたく兄の顔が今度は悲しそうな顔だった。
「違う!」
たく兄の顔をみると、
はっきりとその言葉だけは考える暇もないくらいすぐに出てきた。
すると、少し安心したように
たく兄の眉が緩んだ。
でもそれは一瞬だけだった。
「じゃあ、…なんであんなことしたんだ。」
聞かれたくなかった。
答えられないから。
答えがわからないから。
「……っ、
なんで、たく兄がそんな事聞くの…?
関係ない…じゃん。」
私はたく兄を突き放すように言った。
本当はこんなこと言いたくはない。
だって私が好きなのは紛れもなくたく兄なんだから。
でも、答えられないその質問から逃れようとおもったらそれだけしか出てこなかった。
「…関係ないことないよ。
俺は
…蒼衣が好きだ。」