エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「紗凪ちゃん!」

前方からそんな声がして私の視線はそちらへと流れた。

「……き、ょうごくさん?」

視線の先にいたのはこちらへと慌てたように走り寄ってくる京極さんで。

「紗凪ちゃんいったい何があったの? こんなんじゃ風邪引いちゃうじゃんか」

そう言って自分が着ていた紺色のチェスターコートをさっと脱いで私に羽織らせようとした。

「だ、大丈夫ですから。京極さんの方が寒くて風引いちゃい……」

「俺なら大丈夫だから」

私の抵抗を振り払って私にコートを羽織らせた京極さん。そしてその上から優しく私を抱きしめた。思いもしなかった京極さんの行動に戸惑い、すぐに離れようとした。

「離さないよ。こんなに冷たくなってる紗凪ちゃんを放っておけるわけないじゃんか」

どこか切なげなその声と京極さんから伝わってくる温もりに胸が苦しくなった。
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