エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
私を助けてくれたのはさっき言い合いをした東條さんだった。

「さっきの威勢はどこに行ったんだか。そもそも隙があり過ぎるからこういう目に遭うんだ」

しおらしく謝った私にお説教とも嫌みとも取れる毒を吐き、盛大なため息を吐いた彼を私は不服げな表情で見つめ返す。

「……と、東條さんこそ、先ほど帰ったはずなのになんでここにいるんですか?」

優しい王子様要素ゼロで冷たい瞳が私を捉えて放さない。

「さっき君に暴言を吐かれて不愉快でね。家に帰ってから美味しいワインを飲みなおそうと思い、知人の店に寄っていた。そしたらまた君に会うとは。全く今日はツイてない」

「へぇ」

飾りのないストレートな言葉が私の胸へと突き刺さる。よくも本人を目の前にズバッと毒を吐けるな。

さっきみたいに文句を言ってやりたいところだけれど、助けてもらった手前、そこはぐっと大人の対応をしてみる。
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