エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
そしてリビングに続き、東條さんがひと通り部屋を案内してくれた。

「こっちが俺の部屋でここが君の部屋だ。好きに使ってくれて構わない。ひとまず君の家から運ばれてきたベッドとデスクを業者に運び入れてもらったが配置を変えたいならば言ってくれ」

「あ、このままで大丈夫です。ありがとうございます」

正直、自分の部屋を用意してくれるとは思っていなかったら嬉しかったりする。東條さんなりに気を遣ってくれたのだろう。暫くキョロキョロと部屋を眺めていると、

「この部屋では不満か? 一緒の方が良かったか?」

と、どこか悪戯な笑みを浮かべながら私を見下ろす東條さんが目に飛び込んできた。

「それは絶対にあり得ないです。お部屋を用意していただきありがとうございます」

なにを言っているんだ、この人は。家を提供してもらっておいて文句を言う権利はないが、それでも私たちが同じ部屋で暮らすなんて四六時中喧嘩をするものだろう。それこそ一年ももたずに離婚しかねない。

「なんて冗談に決まってるだろう。ぼーっと突っ立っていないで早く荷物を整理したらどうだ? 夜にごそごそされると迷惑だからな。あと、終わったらリビングに来てくれ」

それだけ言い残して東條さんは早々に部屋を出て行ってしまった。
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