ユリの花はあまり好きじゃない
 最後に目にした姿は眠っている顔だった。
 最後に耳にした声は、ご主人様に追い縋るような哀しい声だった。

 シンちゃんはどうしようもない人。

 お金にルーズで、人の話は聞かなくて、趣味はパチンコとゲーム。
 散財するくせに仕事は続かない。

 何年も、何年も、私はそうやってシンちゃんのせいにして来た。

 シンちゃんがそんなだから、別れるしか方法がなかったんだよ。
 シンちゃんが悪いんだよ。
 全部シンちゃんのせいなんだよ。

 全ての罪を擦り付けるたび、いつも胸が苦しくなった。

 あの日から10年以上の年月が過ぎ去った今でもシンちゃんを思い出さない日はない。

 特にユリの花を目にすると、泣きたくなる。



 だから、私はユリの花はあまり好きじゃない。



Fin
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