センパイの嘘つき
「柳先輩、どうしてこないの」
思いつめたような顔をして、真ん中の子が言う。
見たことある子だった。同級生だけど、名前は知らない。
「…ごめんなさい、私もわからない」
これでこのセリフを言うのは何度目だろう。
「っ…先輩の彼女なんだよね?どうして分からないの?先輩に口止めされてるの!?」
「…ごめんなさい。でも、本当に知らないの」
「…彼女だって思ってるのは柊木さんだけなんじゃない?」
泣きそうな顔でそう言って、彼女は走って行ってしまった。
付き添いの二人も困ったように私をみて、彼女を追いかける。
廊下を歩く人たちからの視線を感じる。
泣きたいのは、こっちだ。
先輩に会えないことが、こんなにも辛くて、しんどいなんて、知らなかった。