センパイの嘘つき


休み時間、保健室。


「…呼び出されたから来たけど…なに、イタズラ?」


引き返そうとする先輩の制服の裾を慌てて掴む。


「違います!…私が話しかけても絶対無視されるから、里美ちゃんに頼んで…」


「…タチ悪」


だって、痛いの我慢するから。


「手、相当痛いはずですよ」


「…別になんともない」


そっぽを向く先輩にカチンときて、私は先輩の手首を少し強めに握る。


「っ…おい」


「ほら、また嘘つく」


私は先輩を座らせて、引き出しから湿布を取り出す。


「男、苦手なんじゃないのかよ」


「…先輩は、大丈夫です」


私はちょうどいい大きさに湿布を切り、シワにならないように慎重に先輩の手に貼る。


「…あのさ、忘れたの?」


先輩の手が私の髪をすっとかき分けて、首に触れる。


熱い感触を思い出して、ビクッと体が震える。

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