守りたい人【完】(番外編完)
「朝比奈さん、最近仕事忙しいんか?」


モグモグと朝ごはんを口に運びながら、鍛冶君がそう問いかける。

すると、朝比奈さんは「まぁな」とだけ言って黙々と箸を進めた。


その姿を見て、やっぱり忙しいんだと心配になる。

昨日何時に帰ってきたかは分からないけど、きっと夜遅かったんだと思う。


モグモグと朝ごはんを頬張りながら、2人の姿を見つめる。

相変わらず、ポーカーフェイスで何を考えているか謎な朝比奈さん。

そして、ず~っと1人で喋っている明るく元気な鍛冶君。

だけど、昨日見たあの姿が頭から離れない。


真っ直ぐに真剣な表情で、私だけを見つめる大きな瞳。

まるで別人のようなその姿に、目を奪われた。

もしかすると、あれが本当の鍛冶君の姿で、今元気にはしゃいでいる姿は作られた鍛冶君なんだろうか。


声には出さずに溜息を吐く。

これから、どうしたらいいのか分からない。


鍛冶君はこれからも私の事を想うと言っていた。

その気持ちは、もちろん嬉しい。

嬉しいけれど、その気持ちには答えられない。


私は朝比奈さんが好きだから。

その気持ちだけは変わらないから。
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