守りたい人【完】(番外編完)
「私ってこんなに臆病だったっけ……」
深い溜息を吐いて縁側に腰を下ろす。
意気地なしな自分に嫌気を覚えながら、投げやりにビールを口にして空を見上げた。
気が付けば7月に入って、ムシムシした日が続くようになってきた。
ネコっ毛な私の髪は、湿気を拭くんでウネウネと膨らんでいた。
一番嫌な季節になったなと思いながら、無造作に伸びきった髪を一つにまとめた。
すると。
「それ地毛?」
不意に声を掛けられてビクリと肩を震わす。
勢いよく後ろを振り返ると、ビールを片手にお風呂上りの朝比奈さんが私を見下ろしていた。
まだ乾かしていない髪を無造作にタオルで拭くその姿は、妙に色気を感じて思わず見惚れてしまった。
それでも、そんな心中がバレないように慌てて視線を前に向ける。
「ネコっ毛なんです」
「へぇ、パーマでもかけてるのかと思った」
「そんないいもんじゃないですよ。そろそろ切ろうかと思ってた所ですし」
早口にそう言った私を見て、朝比奈さんがゆっくりと隣に腰を下ろした。
トクンと甘い痛みが胸を締め付けると同時に、体が無意識に固くなる。