守りたい人【完】(番外編完)
「――朝比奈さ……ん」
扉を開けると同時に出した声が、無意識に崩れていく。
扉を開けたままの体制で、ポカンと口を開けたまま固まる。
だって、目の前に見えた景色が一瞬現実とは思えなくて。
「おはようございます」
それでも、固まる私にかけられた声にようやく我に返った。
慌てて瞬きをして、頭を下げる。
「避難されている方ですか?」
「え、あ、はい」
「お怪我はありませんか」
「お怪我……あ、はい、大丈夫、です」
「そうですか。良かったです。準備が出来次第、すぐに炊き出しなどのお手伝いをさせていただきますね」
ぼんやりとした私の答えとは正反対に、ハキハキとした簡潔な受け答えに再び目を瞬く。
そして、失礼だと分かりながらも、目の前の人をじぃっと見つめる。